物理系のメモ

物理の専門書のレビューや,解説,覚え書き.

ベクトル解析のファインマン図

ベクトル解析のファインマン

面倒なベクトルの内積外積の計算を,ファインマンダイアグラムの如く華麗に計算できちゃうって話です.

『Boosting Vector Differential Calculus with the Graphical Notation』January 9, 2020っていう論文の解説記事です.なんとめっちゃ最新のやつですが,難しくはないです.(そこがすごいんですけど)学部生でも読めちゃいます.
 この記事を読めば,例えば,こんな公式をグラフィカルに簡単に示せます.
 A\times (B\times C) = B(A\cdot C)- C(A\cdot B)  \nabla(A\cdot B)=(B\cdot\nabla)A+B\times(\nabla \times A)+(A\leftrightarrow B)
最後の (A\leftrightarrow B)は第一項と二項のAとBの入れ替えという意味です.長いので省略しました.もちろん,A,Bはベクトルです. 
 
以下はもちろん,上の公式が分かってる前提のお話です.まだ勉強してない方は一度複雑な計算は経験しおくべきです.また,この先はベクトルを散々計算した人推奨で,ベクトルとは何かなど基礎的な話は一切ありません.逆にベクトルのことを全く知らない人でもルールを覚えれば計算できます!
 では本題です.
 
 
初めは,いくつかの約束を覚えてもらいます.

スカラー,ベクトル,内積

f:id:SingASong:20200626230933p:plain上に書いてあるように,スカラーは四角で囲んだもの,ベクトルはスカラーに毛が生えたもので表します.さらに,内積はベクトル同士の毛を繋げることにより表します.以下はいろんな演算の表し方です.f:id:SingASong:20200626230936p:plain図の書き方はかなり自由で,内積はとにかく線で繋がってさえいれば意味は同じです.
さて,続いては外積です.外積は少し注意が必要です.

外積 

f:id:SingASong:20200627004522p:plainA\times B = - B\times Aが成り立つために,3本の毛が集まっている節の部分は,順番が保たれてなければなりません.つまり,以下の図を見てください.f:id:SingASong:20200627004528p:plain上図のように,節がねじれると,つまり時計回りに枝の色を読むと元の関係と異なっている場合,マイナスが付きます.ではベクトルの3重積を考えてみましょう.

3重積,4重積

f:id:SingASong:20200627004535p:plain3重積に関しては,A→B→C→Aの関係がある限り,変わらないというのは,覚えている方も多いのではないでしょうか?しかし改めて図にしてみると,その等価な関係性が一目瞭然です.では次に4重積を見てみましょう.f:id:SingASong:20200627004541p:plain個人的には4重積をまともに計算した経験はないのですが,恐らく大変でしょう.しかし,やはり図にすることで,あっさりと様々な関係性が導けます.次は覚えておくとめっちゃ便利な関係式です.ここでは定理って呼んでおきます.

 

定理的なやつ

f:id:SingASong:20200627004546p:plainこの定理はしっかり頭に入れておいてください.次は微分演算子についてです.

 

微分演算子

f:id:SingASong:20200627004552p:plain上図の右下は重要で,普通の外積と違い演算子になっていることに注意です.途中から,字の太さが変わっていますがご勘弁.では,以上を踏まえて,以下は実践的な問題を解きましょう.
 

実践

f:id:SingASong:20200627004555p:plain
f:id:SingASong:20200627004601p:plainf:id:SingASong:20200627004606p:plain
ベクトル積の計算を一度成分でやっている人からしたら,有用性が分かるのではないでしょうか.グラフィカルに式を導き出す姿はさながらファインマンダイアグラムの様で,エレガント.
以上で今回の解説は終了です.質問などはコメント欄にお願いします.また,今回は7割くらいしか論文内容を紹介できてませんので,ぜひ興味を持たれた方は原著の方を参照です.さらに,今回紹介した論文ではせいぜい微分演算子まででしたが,
『An Invitation to Graphical Tensor Methods: Exwrcises in Graphical Vector and Tensor Calculus and More』
では,更なる応用として,積分や,球面調和関数,量子力学演算子なんかの計算もしてます.筆者はまだみていませんが,どうやら応用はかなり進んでるようです. 

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